A-typeで行こう!〜自閉症スペクトル一家の愉快な生活〜
アスペルガー症候群って何?
What is Asperger's syndrome?
2000.11.ラギィ版
・この資料は、ラギィがアスペルガー症候群の診断を受けた後、ラギィが通っている保育園のスタッフと今後の保育について話し合った時に、保育園に渡したものです(WEB用にリンクを張るなど、少し手を加えました)。
これまでの自分の体験から学んだことや、本やWEBサイトで調べたことを元にしていますが、素人(私=ウーシャ)がまとめたものですので、間違いがあるかもしれません。
・「その場・その時・いちいち・何度でも」という標語は、ペンギンさんのアドバイスです。
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アスペルガー症候群は、「広汎性発達障害」または「自閉症スペクトル」と呼ばれる発達障害のひとつで、簡単に言うと、「知的遅れがなく、表面上は言語使用可能な自閉症」です。(「アスペルガー」という耳慣れない名称は、こうした子供たちを最初に診断した、オーストリア人のお医者さんの名前にちなみます。)

- 生まれつきの、中枢神経(脳)の障害で、「治る」ということはありません。しかし、成長と共に、普通の人とは違う道のりをたどって、ゆっくりではありますが、発達し続けます。周囲の理解を得て、適切なトレーニングを積むことで、社会に適応することは可能です。
- 脳内の情報処理の仕方が独特なため、見たり聞いたり感じたりのしかたが、普通の人とは違います。そのため、普通の人と同じようには、世の中を理解することができません。
そのため、人と関わったり、自分の気持ちを人に伝えたり、人の気持ちをくみとったりすることが、とても苦手です。
- 「場の雰囲気を読み取り」「その場にふさわしい行動をとる」ことも苦手なので、「自分勝手でわがまま」にみえることもあります。
- 周囲の理解があれば、「マイペースだけど、とてもユニークで案外素直な、がんばりや」として育つことができます。
★参考★
- 自閉症の手引き
http://www.nucl.nagoya-u.ac.jp/~taco/aut-soc/rainman/index.html
- アスペルガー症候群の診断基準
http://www1.plala.or.jp/santa/sindan.html
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自閉症と同様、次の3つの領域に障害があります。
- 社会的相互作用
- コミュニケーション
- 想像力、興味の偏り
また、次のような特徴も見られます。
- 過敏・過鈍
- 発達の偏り・不器用
- 反復的な動作
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◇人との関わり方がわからない
他の子供と協調して遊べない/周りの出来事に無関心なように見える
★ラギィの場合★
- お友達に関心はあり、一緒に遊びたい気持ちもあります。しかし、どうやって遊んでいいのかわからず、お友達の気を引くつもりでおかしな歌をうたったり、その場に無関係な(でもラギィの気に入っている)セリフを大声でさけんだりします。お友達には何のことだかわからないので、当然無視されたり、笑われたりしてしまいます。
- ホールでの集団遊びの時など、周囲があまりに混沌としていると、自分を守るために感覚を遮断していることがあります。カーテンに隠れるのも、刺激を遮断するためだと思われます。
一見、周りのことに無関心なようですが、実はこのようにコントロールしながら、よく見て覚えています。
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◇ことばの使い方が通常と異なる
オウム返しやひとりごとなど、その場に不適切なことを言う/相手にかまわず自分の興味あることを一方的に話す
★ラギィの場合★
- オウム返しは減ってきましたが、わからないことを聞かれると、まだオウム返しをします。「何してるの?」→「ナニシテル!」※当人に、悪気はありません。
- 不適切な言葉遣いをすることがあります。(大人に向かって、「オイ、オマエ、これとってクレルカイ」「○○シナサイ!」など)
ラギィにはまだ、人には目上の人/目下の人というような、社会的序列があることを理解できません。自分と相手の関係を判断し、相手によって言葉遣いを選ぶ(または、誰に対してもていねいに接する)ことを、学んでいく必要があります。
◇ことばの理解のしかたが通常と異なる
集団全体への指示が理解しにくい/耳からの情報を理解しにくかったり、言葉を聞いてから意味を理解するまでに時間がかかる(聴覚は正常)/視覚からの情報のほうが理解しやすいことがある(絵や実物、ジェスチャーなど)
★ラギィの場合★
- ラギィに何か聞くと、3〜5秒くらいたってから返事をすることがあります。
「ラギィ、おやつ食べる?」「.........................................................うん、たべるよ!」
聞いたことを理解するのに時間がかかります(聞いた音を一度録音して、巻き戻して再生しながら意味を理解する感じ)。たてつづけに話しかけず、1文ごとに間をおくと、理解しやすくなります。
- 集団への指示が、自分にも関係のある指示だと理解しにくいです。また、ほかの音にまぎれて指示が聞き取れないこともあります。「ラギィ」と呼んで注意をひいてから個別に指示すると、理解しやすいです。
◇会話が苦手
自分から会話を始めてもよいタイミングがわからない/会話を続けられない
★ラギィの場合★
- やっと、会話というものがあるのを理解してきたところだと思います。
「はい」「いいえ」で答えられる質問には答えられるようになりましたが、「何が」「どうして」「どうなった」などの質問は苦手です。
- 自分が話していいタイミング、話題などは、まだ気にもしていない段階です。他人の会話に平気で割り込み、自分にだけわかる話を延々としゃべりつづけます。
- 一見、お話しが上手なように見えますが、しばらく話してみると「会話」がトンチンカンであるのがわかります。
- 「会話」が人との気持ちのやりとりであるということが、少しわかってきている段階のようです。
※言葉を、自分の要求を満たすための「道具」としては、けっこう上手に使っていますが…。
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◇他人と自分の区別がついていない
人の立場が自分と違うことを、想像できない/自分の知っていることは誰もが知っていると思っている
★ラギィの場合★
- 自分がのどが渇いたり空腹になると、父母にもむりやり飲ませたり、食べ物を父母の口に押し込んだりします(「今ほしくない」と断っても!)本人は親切のつもり。
- 保育園で聞いた歌を、母に「歌って!」とせがみます(自分が知っていれば、母も当然知っていると思っている)。
「その歌知らないよ。どんな歌?ラギィ、歌ってみせてよ」というと、じれてしまいます。
◇人の気持ちがわからない
自分が人にどう思われているか、正確に判断できない/自分の発言や行動によって起きた相手の反応を、その都度正しく読み取ることができない(ちょっとした表情の変化やしぐさ、言葉の「言外の意味」を読み取れないため)
★ラギィの場合★
- 自分が人にどう思われているか、気にもしていない状態です(その前に、「人にはそれぞれの気持ちがある」ということが、わかっていません)。
そのため、「わがままを通してばかりだと、お友達に遊んでもらえなくなる」などということがわかりません。
◇興味の偏り
興味のある物事へは、非常に集中して取り組む/特定の物・事にこだわる/変化が苦手
★ラギィの場合★
- ラギィも、興味のある物にはとことん夢中になります。しかし、ラギィのマイブームは、これまでのところ3ヶ月単位くらいで変化しているので、あまり心配しなくてもよさそうです。
- 「これをしたい」と思ったら、じれながら、泣きながらでも、自分で練習してできるようになってしまいます。生まれついての「がんばりや」さんです。
しかし、「興味のない」ことには、見事に無関心です。そんなわけで、 ラギィに何かさせたい・教えたいときの親や先生の仕事は、「その気にさせること」に尽きると思われます。
- 着たい服、遊びたいおもちゃなどに、「これでなきゃ」というこだわりがあります。
混沌とした世界の中で、そこが落ち着けるポイントなのかもしれません。
- 「いつもと違う」ことが苦手ですが、事前によく事情を話して、「大丈夫だよ」と教えておくと、対応可能です(事前に話すのを忘れると、パニックを起こすこともあります)。
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◇感じ方に一貫性がない
知覚過敏がある一方で、軽い痛みには鈍感っだったりする/普通の人に聞こえない音がよく聞こえ、普通に聞こえる音が聞こえない場合がある/感じ方が時によって変わる
★ラギィの場合★
- 触覚過敏があり、手がべたべたするのが大嫌いです。また、服も、ちょっとでもぬれると着替えたがります。
- 暑さ・寒さには鈍感だったりします。
- 騒音に弱いようです。でも、呼んでも聞こえないことがあります。そのくせ、お菓子の袋を開けるかすかな音に反応して飛んできたりもします。
- 光をまぶしがることがあります。
◇失敗に弱い
失敗への耐性が弱く、過敏に反応する
★ラギィの場合★
- 失敗したこと、叱られたことを、とても気に病みます(大声で叱らなくても、自分が失敗したこと、叱られていることは、よくわかっています)。うまくやりたい、きちんとしたい、という気持ちが強いのかもしれません(完璧主義)。
- ちょっと失敗(牛乳をちょっとこぼすなど)しただけで、「あーもうどーしよう、もうだめだ」とパニックを起こして暴れます(牛乳をわざと床にぶちまける、など←こっちの被害のほうが大きい)。
「誤って・事故で」と「わざと」の違いがわかっていません(どちらも、目に見える結果は同じなので。違うのは、行為者の「気持ち」と、まわりの人に引き起こされる「気持ち」であり、それを感知するのはラギィの苦手分野です)。
また、失敗の程度(たいしたことじゃないのか、重大な失敗なのか)の判断も正しくできていません。いつでも、最大級の失敗をしてしまったように感じているのかもしれません。
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◇発達の偏り
得意分野・不得意分野のでこぼこが著しい
★ラギィの場合★
- 「あれができるなら、これもできるだろう」が通用しません。よく観察して、できること・できないことを見極める必要があります。
- 特に、社会性はゆっくり発達します。「人の気持ちがわかる」ようになるのが、普通の子が4〜5歳なのに対して、ラギィのような子は10歳くらいになるということです。
◇不器用
目(からの情報)と手を連携させて行う動作や、体の数箇所を同時に使うような動作が苦手(一度に一つのことしか処理できないため)
★ラギィの場合★
- 絵は苦手のようです。ボール遊び、縄跳びなどにも、苦労するかもしれません。
- 衣類の着脱、箸での食事などの身辺自立にも、時間がかかりそうです。
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ピョンピョン跳ねる/クルクル回る/手をパタパタさせる/つま先立ちで歩く
★ラギィの場合★
- 興奮すると、上記のような動作をします。これは不随意運動で、本人にはコントロールしにくいものです。
- こうした動作には、気持ちを落ち着かせる作用があるようです。
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- 「みんなに合わせること」が苦手なのが、ラギィの障害であり個性です。集団行動をすること自体が、本人にとってつらい場合があることを、ご理解ください。
- 一斉指示に従えない場合は、個別の声掛けをお願いします。
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- 普通の子のようには、「あたりまえのこと」「常識」が自然に身につきません。不適切な行動をしたら、そのつど、その場面では「どう振舞えばよいのか」教えてください。
- 不適切な行動に対しては、「その場・その時・いちいち・何度でも」ご指導ください。
- 普通の子同様、人として「してはいけないこと」「しなければならないこと」は、根気よくご指導ください。
教える際は、「短く」「淡々と(感情をこめずに)」言ったほうがわかりやすいです。
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- 「みんなと違う」という理由でいじめられ続けると、心に傷を負い、人嫌いになったり心の病気になったりする恐れがあります。本来の障害よりも、こうした二次的な障害のほうが、社会適応を難しくします。
どうぞ、いじめから守ってください。
- 「みんなと一緒」ができないことで、クラスで浮かないよう、また、「特別扱い」と見られないよう、さりげないフォローをお願いします。
- 適切な言動がとれないとき、ラギィの気持ちをお友達に通訳してください。また、お友達の気持ちをラギィに通訳してください。
- きまじめで融通がきかず、言葉を言葉どおり受け取ってしまいます(冗談が通じない)。軽い気持ちでからかっても、本人はまともに傷ついてしまうことがあります。
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- 生まれつき脳のつくりが違うので、どう頑張っても「普通」にはなり得ません。「普通」を目指した場合、「普通」になろうと本人がまじめに努力すればするほど、「普通」からは隔たっていき、挫折感・無力感ばかりがつのることになります。
- もちろん、最低限の社会性は身に付ける必要はありますが、人生の戦略としては、苦手分野を克服するよりは得意分野を伸ばし、「愛される変わり者」を目指すほうがよいと思われます。
- 手先も人間関係も不器用で、失敗したり叱られたりが多くなりそうな子です。何か良いところを見つけたら、誉めて励まして伸ばす方向でご指導くださるよう、お願いいたします。
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作成:2001 最終更新:2005